大熊町「学び舎ゆめの森」の演劇教育への取り組み

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11/24に福島県双葉郡大熊町で新しくできた「学び舎ゆめの森」に行ってきました。
詳細は、会員向けのメーリングリストで伝えましたが、ここでは施設や福島県の取り組みについて書きたいと思います。

大熊町について

大野駅福島県の海沿いの町で、東日本大震災によって全町避難となり、人がいなくなりました。町役場が戻ってきたのが2019年だそうで、そこから復興のための建築が進んでいます。今はほとんど人が住んでいません。

交通インフラもまだまだなので、循環するシャトルバス(といってもバンが走ってるだけ)で、役場やゆめの森に移動します。

自分たちの土地に帰ってきて、まさに今未来に向けて、町作りをしているところですが、ユニークなのはそこに様々な人材も集まっているという点です。ぼくの知人経営者が、大熊インキュベーションセンター(廃校となった小学校を活用)の運営に関わっていて、そこにはたくさんの企業が参画しています。(大元のご縁は実はその方です)

大熊links印象的だったのは、いろいろなところで、ディスカッションが行われていることです。帰りのバス待ちに入ったカフェでも、若い人たちが議論していましたし、ぼくらが教育長・副校長と打ち合わせをした部屋のホワイトボードにも、ミッションやバリューやコンセプト図などが一面に書かれていました。まるで、起業塾にでも来たのかと思うくらいです。

創造と破壊は対義語です。完全に破壊された大熊町では、急ピッチで創造が行われており、そこには「最先端」や「情熱」「優秀な人材」が集まっています。

 

学び舎ゆめの森

学び舎ゆめの森「学校らしくない学校」を自認している、幼・小・中一貫、0~15歳までの学校です。まだ全校生徒は37人。少人数ですが、とても大事に育てていこうという気持ちが随所に見えます。

情報を与えて記憶させるだけの詰め込み教育から脱却し、理想的な教育を実現するんだという強い思いがあります。
資料を見ていると、ぼくの考えと同じものばかりです。こどもたちは、遊びの延長で熱中しながら学ぶことを重視していて、非認知能力(社会情動的スキル)を意識したカリキュラムとなっています。

「ありのままから学ぶ」「本物でリアルな学び」ということも意識されていて、だからこそ演劇教育やアート教育がここでは高く評価されているのです。

学び舎ゆめの森 教育コンセプトこの教育コンセプト図のなかに「五感」「多様性」「STEAM」「遊び」とか、すごく重要なことが載っています。これらを地面に入れている点に注目してください。人間力というのはこうやって、水をやり、栄養を与えるものなんですよ。直接的で目に見えるものではないのです。

理想とステートメントと実現

冊子刊行ミッションステートメントぼくが感銘を受けたのは、例えばステートメントで「ゆめを見つける ゆめを分かち合う ゆめを育てる」としていますが、それを本気で実現しようとしている姿勢です。書かれていることは本来は教育において当然のことなんですけど、当然のことを当然のように実現できるまでとても努力しているのです。

たくさんの聞き触りの良い言葉を並べて、いいことしている感を出したり、それで満足するのではなく、本気で取り組んでいるのが素晴らしいです。

毎年一冊、小学校で学ぶ9名の子どもたちの成長記録と、コラムを載せた冊子「ぼくの、わたしの、友だち」を刊行しています。発行元は教育委員会です。いかに、教育に力を入れて、熱を注いでいるかがここからもわかります。

ゆめの森での演劇教育の取り組み

きおくの森では演劇教育の取り組みですが、現在木村準さんという方が赴任しています。「演劇教育」という言葉をちゃんと使ってやられています。元々震災のときに、今の教育長が大石小学校校長だったときに演劇をやりに来てくれて、そこからの付き合いだそうです。

10/28には集大成となる舞台公演「きおくの森」をやり終えたところです。全ては手探りで、しかし情熱をもって本気で取り組んできた演劇教育プログラムです。
教育長の佐藤由弘氏は「本物から学ぶ、本物を学ぶ」ということをいっていて、ここでは「創造的演劇教育」とも呼び、コミュニケーション力の向上や、仲間との協力、達成感を効果として強調しています。また、楽しいだけの演劇教育でもいけないし、頭でっかちな演劇教育も違う、という感覚を持っているようです。

木村準さん

 

ふたば未来学園

学び舎ゆめの森の校長南郷市兵氏は、かつて文部科学省からふたば未来学園(双葉郡広野町)に勤務し、副校長を務めていましたが、このときに演劇教育を推進したようです。そして、平田オリザ氏も参画しています。この学校では齋藤夏菜子さんが長く授業をやられています。
青年団を招いたり、長く演劇教育に取り組んでいますが、やはりずっと手探りでやってきているという印象です。GLODEAが福島に参画すれば演劇教育もより洗練化されていくのではと思います。

しかし、手探りにもメリットはたくさんあります。本気で向きあい、本気で考え、本気で解決させていくことで得たものはたくさんあろうと推察できます。
この地区ではある意味「演劇教育」というものが、知れ渡っていますが、この地での取り組みのイメージに限定化されています。そこはGLODEAが考えるグローバルな演劇教育とは少し違うでしょう。まだ一般には演劇と教育が結びつかない、偏見や誤解も多そうですが、屈せずに継続しているのは賞賛に値します。

【参考】演劇教育からつながる探究へのまなざし|探究TV / 東洋経済education×ICT

https://youtu.be/120F9qS3hVk

今後の福島県での展開についてご注目願います。