4年ぶりにロサンゼルに行ってきましたが、かねてより興味のあったティム・ロビンスのプリズンプロジェクトについてお話しします。ティム・ロビンス(Tim Robbins)は、「ショーシャンクの空に」という脱獄もの映画でアカデミー賞を受賞した俳優です。その後、彼は、刑務所の囚人向け更正プログラムを始め、再犯率を大きく下げているという実績があります。
アクターズギャング Actor’s Gang
彼の劇場「アクターズギャング(Actor’s Gang)」は、カリフォルニア州ロサンゼルスの、カルバーシティという街にあります。実は、今回のLA一ヶ月ツアーで泊まった場所はカルバーシティで、アクターズギャングから徒歩五分という位置でした。
実は短編映画の撮影もこのアクターズギャングを取り囲む公園で実施しました。
今回渡米前にメールはしましたが、見事に無視されましたが、この「Topsy Turvy」の上演を観に行った際に、ティム・ロビンスがアフタートークをやるということで、たまたま最高のタイミングで、生ティム・ロビンスを見ることが出来ました。
ティム・ロビンスと話す
そして、アフタートークが終わるやいなや、最前列の端っこで見ていたぼくは彼を追いかけ、少し話すことができました。
“日本で演劇教育をやっています。プリズンプロジェクトに興味があります。これを日本に輸入したいんです”ということをいうと、担当者に連絡するようにいわれ、見事繋がることが出来ました。
帰国後になりましたが、プリズンプロジェクトの担当者の方ともZoomで話すことが出来、なんとか前に進んだ気がします。ちなみにプリズンプロジェクトを手がけている人もアクターズギャングの俳優さんだったりして、4年前に観た舞台に出演していた人でした。
とてつもない実績の囚人プログラム
2006年よりこうした活動を進めているようです。劇場内には、このように展示がしてあり、寄付も募っています。
なんと、プログラムに参加した人の再犯率は10.6%に抑えられ、インパクトジャスティスのリポートによると、参加者の懲戒事件の発生率は89%減少しているとのこと。また、刑務所を出てからの就職率は77%と、大変な成果を挙げています。
(Actor’s Gang HPより)
Artbound KCET – The Actors’ Gang Prison Project Rehabilitation Through Theater from The Actors’ Gang Prison Project on Vimeo.
日本でも導入すべき、演劇教育×囚人プログラム
内容の一部をご紹介しましょう。彼らはコメディア・デラルテの手法を取り入れ、囚人たちは顔にペインティングをします。これは、フランスなどでも行われているマスクプレイです。仮面をすることによって、自分という存在から少し離れて、自由に振る舞うことができます。また、自分という自己を見直すきっかけにもなります。
また2018年からは、刑務所を出た後、つまり元囚人たちが演劇を作って公演するという斬新なプログラムもやっています。こうして更正が可能であること、みんなが生きる価値を持っているということを実際の人たちが演劇を通して証言しているのです。
ぼくは、ただただ罰して、無力感・無価値感・罪悪感を植え続けるだけの方法はうまくいかないと思っています。それよりも、自己を受け入れ、自分には価値があるということに気づく逆のアプローチが必要です。
演劇を通して、彼らはそれをやっているのです。日本では、刑務所ではレクリエーションの一環程度で、更正プログラムは労働等です。それでは、無力感・無価値感・罪悪感は増える一方です。そうなっては、仮に出所しても、また犯罪を犯してしまうでしょう。
アクターズギャングのプリズンプロジェクト日本輸入を目指して
GLODEAとしてもこうしたプログラムを近い将来、日本の刑務所でも届けられたらと思っています。アクターズギャングの方々を呼んでのワークショップや、プロジェクトの日本輸入も考えています。続報にご注目ください。