演劇教育家インタビュー第3回 演技講師・演劇教育家 ウルリッヒ・マイヤー・ホーシュ

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「未来のために前進する演劇教育家インタビュー」第3回は、特別版。海外の演劇教育家のインタビュー第三弾です。ドイツのマイケル・チェーホフ講師ウルリッヒ・マイヤー・ホーシュ氏に聞く演劇教育家にとって必要なこと。


 

演劇の手法をこどもたちに向けてどのように使っていますか?

基本的には大人にやるように使います。ただ、より忍耐強くやりますね。こどもは辛抱強くありませんから、エクササイズをやりたがります。すぐ「お芝居を演じるの?」となります。それをよくわかっていないといけません。ゲームを作ったり、シーンを作ってあげないといけません。10歳や12歳の子どもが興味を持つようにです。

基本的な質問は一緒で、「私は誰?」「どこにいるの?」「目的はなに?」「私はパートナーとなにをやるの?」「関係はなに?」です。それらが基本的な質問ですが、私が発明したわけではありません。スタニスラフスキーが発明したわけでもありません。そう書いてはいますが。

例えば、スタニスラフスキーの生徒であるマリア・クネベルさんは彼女は子どもたちに向けてスタニスラフスキーのメソッドを使いました。というのもモスクワのソビエト子供演劇の代表だったからです。彼らの伝統には大人のプロと子どもたちという間に、境目はないからです。子どもであっても真剣に捉えていました。だから私もやるのです。

 

ウルリッヒ・マイヤー・ホーシュ

私がマイケル・チェーホフのテクニークを使うときは、あらゆるツールを使いますが、いくつかは簡単には子どもに受け入れられません。大人たちとであれば、彼らにいつも、俳優たちもそうですね、自分のイメージを見つけなさいといえますが、子どもたちとであれば、私からイメージを与えます。例えば、「イメージしてごらん、湖のそばにいて、月が出ていて、声が聞こえます」と。大人の俳優にとっては特定過ぎるかもしれませんが、子どもの場合は特定のイメージを与えるのです。

 

ファシリテーターとして、または先生にとって重要なことは何ですか?

いくつかの原料があります。アン・ボーガートという方を聞いたことがあるかもしれません。ある本で、芸術家として必要な、3つの原料について述べています。
「良い手法が必要」
「情熱が必要」
「いうべきことが必要」

フォーラムシアターワークショップ
4月22日フォーラムシアターワークショップ

もしいうことがないなら、黙っていなさい。もし手法がないならやらないこと、情熱がないならなぜやるのか?

子どもとのワークでもこれがいえます。いうべきことがあれば、共有できるストーリーやメッセージになります。手法はもつべきです。どの手法でもいいのです。私はチェーホフの手法を選びましたし、フォーラムシアターや、被抑圧者の演劇もとても好きです。

情熱がなければどんな手法も退屈になるでしょう。それ以外に、もう2つ付け足すならば、情熱だけでなく「愛」が必要です。あなたのしていることへの愛。もし愛がないなら、子どもたち相手にはしないことです。

フォーラムシアター討論演劇ワークショップ
4月22日フォーラムシアターワークショップ

演出家は児童劇をよくやりますし、俳優もそうです。他の作品で仕事が得られないからです。私はそういう態度の俳優は起用しません。なぜなら子どもたちのために演じることを愛する俳優が必要だからです。往年の素晴らしい俳優たちは子どもたちのために演じることを愛していました。

もう一つは、最初に質問してくれたように、「聴くこと」です。聴かなくてはいけません。

そこで、チェーホフ・テクニークの話に戻りますと、何かを待つのではなく、活動の中で聴くということ。子どもたちと関わるときは、彼らの求めるものによく耳を傾けなければいけません。もし彼らが動きたがっているなら、動かせるのです。そう導くのです。もし彼らの欲求が、戦いや議論であれば、最初は戦いでしょうが、そこから変化させていきます。ポジティブなエネルギーへと。だから聴くことから始めます。

協会メンバーと
別役、マイヤー・ホーシュ氏、秋江

教師たちはどのようにモチベーションをつくればよいでしょうか?

とにかく情熱を見つけなさい。情熱なしで教えてはいけません。これがプロの仕事というものです。例えば、8時に舞台があるとしましょう。その時間が最悪の状態であるかもしれませんが、プロとして変化させるのです。8時には芝居を愛している人間に変化しないといけないのです。これがアマチュアとプロの違いです。

プロの俳優やプロの教師はわかっているのです。その状態にならずに、舞台に上がることも教室に出ることも出来ないと。愛する人間への変化です。これはあなたの選択です。そのためのベストな方法はわかりません。一つは観客に集中することでしょう。演劇教育であれば、相手とする子どもたちです。いつだって楽しさはあるので、その楽しさに集中しましょう。退屈させたり、イライラさせることに集中しないことです。

 

ウルリッヒ・マイヤー・ホーシュ氏は、2017年4月22日にGLODEA設立記念のワークショップを実施して頂き、そのあとの設立記念パーティーも出席して頂きました。アウグスト・ボアール氏と生前親交があったウルリッヒさんに、被抑圧者の演劇やフォーラムシアターの手法を教授していただき、大変実のある3時間のワークショップとなりました。この模様は映像でも収録しており、皆さんにもご提供できればと考えています。GLODEA会員にはもちろん優待をご用意します。
申し込みはこちらから。


ウルリッヒ・マイヤー・ホーシュ(Ulrich Meyer-Horsch)

俳優、演出家、演技講師。
マイケル・チェーホフ・ヨーロッパの主幹メンバーとしてヨーロッパを中心に
アメリカや台湾でも現在活動している国際的な指導者。
ブラジルに渡り、アウグスト・ボアールとともに被抑圧者の演劇に携わった経歴
を持ち、子どもや青少年大人を対象とした演劇教育の専門家でもある。
また、トルコの紛争地域でも、マイケル・チェーホフ・テクニークを使った
自己表現と解放のワークショップを行っている。