第二か国語習得のためのドラマ教育

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第二外国語習得のための

日本では、英語が義務教育の中にあり、2020年には正式に小学校三年生から公教育に導入されることとなっている。2020年のオリンピックを控えて、他言語習得の関心は老若男女問わずますます高まってきている。今回は、ドラマ教育がどのように第二か国語習得において使われうるのかを見ていきたい。

参考にしたのは、ウォーロック大学の演劇芸術教育の教授ジョーウィンストンが編集した、“Second Language Learning Through Drama”「ドラマ用いた第二か国語学習」という本である。これは理論的なところから、年齢別の実践例、評価方法など、様々な国々でおこなれている実践を基に書かれている。

 

まず、言語は何であるかを改めて考えたい。

ハリデイ(Halliday 1978)は、言語は三つのメタ機能があるとしている。

 

・観念的:思いを表現するために使われる。

・対人関係:社会的な関係を築き保つために使われる。

・モード(方法):話す内容、もしくは書く内容がまとまりある形で伝えるために使われる。

 

言語そのものに、思いをつたえたり、人との関係を築いたり、本やスピーチといった方法で長い内容のものを伝える機能が備わっているのだ。

そして、ハリディは言語選択において不可欠な要因である、社会的な3つの因子があるとしている。

 

・フィールド(状況):行っている社会での活動、もしくは話さしている主題

・印象:人間同士での関係

・モード:様座なコミュニケーションに適応する身体的情報伝達手段

 

これら状況、人、手段の3つの因子は人がどのように言語を使うかということに影響を与えるのである。そしてハルデイは、言語を理解するために社会的な内容や状況に焦点を与えるべきと言っている。

 

     「我々は言語だけを独立させて理解はしない……いつも状況や、

     行動や出来事や人の背景がかかわってくるのである。

     そして、それらが言葉の意味を引き出していくのである。」(ハルデイ1978)

 

それに伴って、またドナルドソンは言語の学習においてこういった状況や背景を考慮に入れることは重要であるとした。「子どもは言葉をすべてから切り離して理解することはない。子どもはその状況を理解するのである。」(ドナルドソン1978)その結果として、状況のコンテキスト(背景)は言語を教えるうえで切っても切り離せないということである

 

 

では、そのうえでドラマ教育の強みというのは何であるのか?

 

演劇では、空間や時間や人間の存在を創造的、象徴的に使う。そもそも、お芝居は場所も時間も人も、全く絵空事なのである。結果それによって、想像的なコンテキストが作られうる。そして、その中では、先生や生徒は、懐疑的な考えを一時的にやめ、「誰かになったり、どこかにいたり、いつか時点にいたりするフリをすることが集団でできるのである」(ニールランド1984)この場所、時間、性格が変化することは生徒が「アイディア、考え、価値観、役割、言語を試す」ことを可能にするのだ。そして、現実とは違い、行動に付きまとう結果に気にすることなく、誰かの立場になったり、安全な環境で思い切った行動に出ることができる。

そしてドラマは、視覚や聴覚,言語や身体を、全部使った多彩な芸術様式であり、そのために生徒はワークに自分たちにあったそれぞれにあった導入や、関わり方をみつけることができるのだ。様々な方法で取り組むことで学びの経験をより強固に彼らの心にとどめることができるのだ。

 

まだまだ日本の英語教育は文法や読解を軸に考えられており、読むことや書くことが重要視される。二つの技能は重要だと認識はしつつも、言語習得はそれだけでは不足している。演劇はその足りないところを様々な形で埋めてくれる。

子どもは、身体を使い、五感を伴って、学ぶことで学習した経験は定着しやすい。そして、ただ知識だけではなく、自分の個性や能力を発揮できるドラマの場では、子どもはより自発性をもって取り組むことができるのだ。

≪参考文献≫

・Joe Winston:Second Language Learning Through Drama (2012)