TIE「地球の贈り物」in 横浜インターナショナルスクール

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2023年12月8日、横浜インターナショナルスクール(YIS, 横浜市中区小港)を訪問しました。国際バカロレア認定校であり、100年の歴史があり、2年前に隈研吾事務所による新校舎が建設された、インターナショナルスクールのなかでも極めて規模の大きな学校です。

いきさつ

伊勢将人TIE「地球の贈り物」は、2021年に姫路女学院中学校で上演したことが始まりです。今回の企画の経緯としては、土の精霊として出演してきた伊勢将人さんが、ヨコハマインターナショナルスクールの教員であり、2021年のシアターウィング公演の際にも何人もの教員が観に来ていたことが背景です。

伊勢さんらが担当している小学校5年生のクラスで、SDGsに関わる学習を継続して行うという流れのなかで、今回の公演が実現しました。

Yokohama International School

公演の詳細の前に、少し学校の様子を紹介します。


さすが隈研吾デザインだとも思いますが、特徴的なのは木の温かみを生かしながら、丸みのある様々な家具が置かれていたところ。机もホワイトボードマーカーで書き込みができたり、電子ホワイトボードやプロジェクターなど最新の設備もありました。アメリカでよくみるウォーターサーバーもありました。各生徒に教室と机が与えられているのではなく、教室を移動しては好きな場所で勉強するというスタイルです。小学生から高校まで、たくさんのこどもたちが学んでいます。海外の学校に来たような気分になりました。

最大規模の「地球の贈り物」始まる

生徒数60名、巨大な劇場(300席クラス)でのTIEは初めてのこと。また、インターナショナルスクールも初めてです。つまり、日本人だけでなく外国人やミックスの子もたくさんおり、どちらかというと英語の方が得意な子たちばかりで、半数近くは日本語がまだまだあまり理解できません。上演は日本語で行われます。

前日の劇場見学の際に、簡易的に照明をプログラミングしてくれました。プロジェクターと音響は、劇場のmacから出す仕組みになっており、データを送付しましたが、担当の方が当日緊急事態でいなくなり、代わりのITセクションの方が急遽セッティングしてくれました。windowsで作ったもので、音源もmacだと流せないものがあり、わざわざ変換して使えるようにしてくれたり、非常に助かりました。

積極的な参加体験

日本の普通の学校とは違って、観る姿勢もくだけていますが、反応は日本人よりも大きく、いい意味でも悪い意味でも、感情が態度に出ます。

伊勢さんが出ると、笑い声が起こり、喋り出すと更に笑い声が起こり、伊勢さんも苦笑する始末。まぁ、先生が出てくるのはウケますよね。別役も開演前に子どもたちと話しましたが、伊勢先生のことを盛んに聞かれました。「つっちんなんだよね」と。

最初の「贈り物」のシアターゲームは、やりたい人だけ舞台に出てきてもらう形を取りましたが、2/3くらいが舞台に上がり、すごいことになっていました。

日本語だけでもなんとか進みそうでしたが、どうしても、よくわかっていない子のために伊勢さんが通訳しながら進めました。

積極性は段違い。引っ込み思案という子はあまり見当たらず、進んで意見を出したり、行動するという習慣がついていると思いました。
ある程度、先生が綱引きをしないと、バラバラになってしまうでしょうが、特に混乱もなく進んでいきました。同じくインターナショナルスクールの教員をやっている島萌香さんも、レイチェル・カーソン役で登場以外は、サポートに回りました。

最長リフレクション

TIEの醍醐味であるリフレクション(ファシリテーターが質問し、ディスカッションを深めていく)では、手を挙げる生徒が多い上に、日本語と英語が入り混じるので、いつもの倍の時間がかかりました。

たくさんの意見を出してくれるのは嬉しいこと。ファシリテーターとしては、スピーディーに展開しながら話の筋道をつくっていかないといけません。

小学生ならではですが、ずっと粘り強く手を挙げるので、無下にも出来ずたくさん拾うのですが、英語通訳を逐一入れていたので、時間が掛かり、子どもたちもフラストレーションがたまったことでしょう。

小学校5年生としてはとても優秀だと思いますし、SDGsのこともよく知っています。しかし、知識偏重になっており、記憶力と思考力は素晴らしいのですが、心で感じる部分はちょっと足りないように感じました。「エレメント」のゲームでも、他の子を置き去りにして、走り回るリーダーがいたり、地球環境を本気で考えるというよりは、「頭脳を使ってこんなことをやっていけばいいんでしょ」みたいな空気も感じました。アート教育もかなりやっているのですが、親身に地球のことを考えるという姿勢はその場ではあまりみられなくて、感想文を書いてほしいなと思いました。

ドラマ部分・漫才部分の工夫

漫才では、ハイスピードの言葉の応酬になりますし、慣用句がたくさん出てくるので、事前学習として、それらの慣用句を教えておいてもらったり、英語版の台本を読ませたりしました。

また、ドラマ部分でも難しめの日本語は出てくるのですが、全部変換しようとすると、演技に集中できなくなるので、ちょっとゆっくりめにハッキリと喋るよう心がけて臨みました。

また、舞台が広いので、スペースをなるべく大きく使うように、演技の際にあまり中央に固まりすぎないように注意しました。

 

拍手が巻き起こる

やはり反応がいいので、四人の精霊のパートが終わる毎に拍手が起こりました。極めつけは、クライマックスの訴えかけシーンのあと、暗転となり、芝居が終わったと勘違いして拍手喝采になりました。(でも、ある意味終わっているのでいいかな)

 

そのあと、みんなで手を繋いで一体感を感じるシーンをやりました。手を繋いでくれていたようです。一体感を感じてもらえたでしょうか?

最後は「精霊の子」のバッジを配り、終了。全員に配りました。ちなみに今公演よりバッジが新しいデザインとなりました。

 

アフタートークセッション

1時間25分ほどのランニングタイム(通常は1時間くらい)。残り10分弱で、アフタートークをやりました。ここでもたくさん手を挙げてくれました。質問コーナーでは、「どうして火の精霊は水の中にいられたの?」「どうして風の精霊は空気なのに見えるんですか?」「レイチェル・カーソンさんはなんで日本語を喋れるんですか?」といった茶化すような質問だったり、「SDGsのどのナンバーを最も大事にしてますか?」など、ちょっとこれまでとは異なる質問でした。感想とか、どんなことを学んだかという部分があまり聞けなかったなと思います。ぼくらとしては、心に残り、環境問題への意識を高め、行動化していってほしいのですが、授業の一環で組まれていることもあり、「楽しさ」と「勉強」が強めだったように思います。

記念撮影

最後はみんなで記念撮影しました。壮観な絵。

振り返って

今回インターナショナルスクールで実績を作れたのはとてもよかったと思います。SDGsは注目されている学習テーマですし、SDGsの理解を深め、環境問題への意識を高め、参加体験も得られる「地球の贈り物」は、最も上演されているシアター・イン・エデュケーションですし、他の学校にもアピールしていきやすくなりました。

言葉の壁はありましたが、内容的には問題なかったと思います。メンバーとしては、環境問題に関していくつかの用語を英語でも理解しておく必要があるでしょう。
また、リフレクションでは、外から見ていて進行にじれったい思いがあり、大人数でも話をまとめ上げたり、話題の軌道修正や筋道作りをしていけるようにファシリ力を磨いていってほしいと思いました。

 

脚本・演出・プロジェクター・音響:別役慎司 照明:井上崇
火の精霊:aqiLa 土の精霊:伊勢将人 水の精霊:水地優子 風の精霊:柚木ひろ葉 レイチェル・カーソン:島萌香

TIE「地球の贈り物」特設ページ

公演の依頼はGLODEAまで