シアター・イン・エデュケーション(Theatre In Education, TIE)の第三弾プロジェクト「星の王子さま」を終えました。
今回はサン・テグジュペリの名作を初のTIE化するという試みで、合わせてTIE脚本講座も開催し、盛り上げていきました。
今回は出演希望者が7名いたので、一部Wキャストとしました。公演詳細はこちら。
姫路女学院中学校公演
さて、直後に全国的なニュースとなって驚きましたが、姫路女学院に行き、中学二年生を対象に「演劇」の授業のなかで、TIE公演を実施しました。参加生徒は20名で、約10名の保護者もいらっしゃいました。
前作「地球の贈り物」も観ているので、初っぱな「ぼくが誰だかわかる?」で「火の精霊!」という声がありました。
6人の星の住人のところへ、チームに分かれて話を聞きに行くシーンは、参加パートの一つ。星の住人は変わった人に見えるけれど、実は地球にもこういう人はたくさんいるという気づきがあります。
シアターゲーム「マシーン」では、広々と体育館を使って。
飛行士の飛行機修理のための部品をつくります。なかなか動きが明確にならず、メリハリのある行動が持続できないんだなぁと思いました。
簡単そうなゲームですけど、意外にてこずる様子がどの回も見られました。
今回は前作のように4人でファシリテーションというスタイルではなく、飛行士役のaqiLaさんが単独でファシリするということが多かったです。ドンドン上達していきましたが、姫路の回は、相当てこずったようで、翌日に寝込んだと聞きました。
距離感や目線など、20人相手の大変さを実感したようです。
上演終了後は記念撮影をし、保護者の方から感想を聞いたりしました。だいぶ演劇教育の意義や効果を実感されているようで、より高い期待を感じました。
生徒たちは一年に一回の特別な機会ということで、恥ずかしさはまだまだ目立ちますが、たくさんの得るものがあったと思います。
【感想より】
もちろん見える大切なものもあるけれど、見えないからこそ大切なものや綺麗なものがあるんだと気付きました。自分の大切なものはずっと大切にしていこうと思いました!
だんだん大人になっていくにつれて想像力が衰えてくるということを伝えたいんだと思いました。子供は何に対しても疑問や好奇心を持ちますが大人は考えることをやめたり無意識に決めつけたりしていると感じました。また大人は知らず知らずのうちに視野や考える範囲を狭くしていってると考えました。この劇の影響で私はもっと幅広い範囲、様々な視点で物事を捉えようと思いました。
小学校に入った時に、友達を作れるか不安だったので、友達を作らないのは簡単だけど作るのは難しいってことを言っていて、そうだなと思いました。
終盤にあった王子さまが飛行士に、ボクがいなくなっても君の心のなかにいるよっと言った場面が特に印象に残りました。理由は確かに大切なものや人は離れてしまったり、いなくなっても心の中にはいつまでもいるなと共感できたからです。
シアターウィング公演
10月8(土)・9(日)の2日間、四ツ谷のシアターウィングにて行いました。なんと、親子向け回だけでなく、大人のためのTIEも今回初挑戦しました。
親子向け回
保護者は後方席に座り、お子さんたちは前方席へ。みんな小学生でした。
「星の王子さま」はリフレクションがたくさんありますが、初っぱなからとても積極的で、盛んに手を挙げて、答えていたのが印象的でした。
星の住人への訪問や、シアターゲーム「マシーン」も楽しく、積極的にやってくれました。
保護者の方々も、お子さんの様子に目を細めていました。友だちについてや、環境問題など、結構大人顔負けの発言もありましたしね。
大人向け
大人向けは、多少ファシリを変えつつも、「童心に返った大人」として参加してもらいました。大人に対してもTIEは有効だと思いました。なんだか、ディズニーランドのようなノリで、世界にコミットして参加してくれていました。
子供と比べると、やはり恥ずかしさや空気を読む空気が随所にあるんですけど、すごいうなずいてくれますし、たぶん全員発言してましたね。
そんなに大人大人した発言も少なかったかなと思いますが、やっぱり見方や価値観が子供とは違うなと思いました。
振り返り
観客の反応を見ても、シアター・イン・エデュケーション「星の王子さま」はうまくいったと思いました。作品の象徴的なエピソードもリフレクションによって、現実世界とリンクしたり、最後は深遠な問いにまで踏み込み、一緒に物語に同行した観客たちは主観と客観の両方から心に響いたようです。
水地さん、aqiLaさんは「クリスマスキャロル」「地球の贈り物」にも出演していますし、井上さん、御法川さん、ひろ葉さんは「地球の贈り物」に出演しています。上山くん、島さんは講座を全部受講していますし、頼もしいメンバーがそろって上演することができました。そして、彼ら自身も相当の学びや経験になったと思われます。
中学生・親子(小学生)・大人・大人と子供のミックス、という4パターン試せたということも収穫だったと思います。反応の違いはもちろんありますし、それに応じた臨機応変なファシリを繰り出さないといけないので、技術向上にも繋がりました。大学教授も観に来ていましたが、すごく感心されていましたよ。
本当の課題は、こうした良い作品を、もっと多くの人たちに届けるにはどうすればいいかということです。脚本講座で書いた作品を実際にやるために動いている人もいますし、活動人数を増やしていくことも大事ですね。演劇教育は、中途半端な知識・経験や、片手間ではやっぱり厳しいので、講座に参加された方がもっと継続的に深く関わっていってくれたらと強く思います。どうしてもおなじみのメンバーのようになってしまうので、離れて見ているのではなく、とにかく関わっていってほしいなと思います。