演劇発表会「小公女」
2月に実施した最後の締めとなる発表会では、「小公女」を上演しました。
全員出演の30分のお芝居で、学校をあげてのリベラルアーツフェスティバルのなかで、中学生の発表として披露しました(高校生はプレゼン発表など)。
「小公女セーラ」でおなじみの作品を、新たに舞台用として台本を執筆し、12月から取り組んできました。
舞台での大きな発表会、そして時間も少ないということから、最初から「とても大変」「覚悟して」と念を押していたものの、生徒たちはいまいち実感がなく、大してやる気も見られませんでした。
こちらは演出を終えないと、本番まで間に合いません。通常授業より速いテンポでの厳しいレッスンに気持ちが後ろ向きになる生徒たち。そこで、「やりたくなければやらなくていい」と突き放しました。
たいていそうすると無理にでもやる気を出すものですが、放課後に自主練を重ねていくなかで、だんだんと火がつき、完成度が高まっていきました。
とにかく自分たちで考えて、動いて、一致団結して取り組まない限り、人に見せられるものは仕上がりません。自分のことしか考えていなかった子たちも、だんだんと人に観てもらうこと、支えてもらうこと、クラスの全員と協力し合うことの大切さを学び取っていきました。
発表会をするのは当たり前ではありません。一人ではできません。衣裳の着替えの手伝いや、舞台装置の転換なども声をかけあいながらやれるようになりました。小さくて全然聞こえない声も、少しずつ声が出せるようになりました。
そして、高校生や先生方の前で、30分間の舞台をやりきりました。中学一年生の堂々たる演技に、高校生や先生は衝撃を受けたといいます。
大変な思いを味わわなければ、得るものは少ないものです。妥協したり、やめることも選択できます。けれど、それでは得るものはほとんどない。苦労して、もうやりたくないと思うくらいがんばったからこそ、感動があるのです。今回はそのことを知ってほしかったのです。
また、特定の仲の良い生徒たちとばかり一緒にいて、一学年一クラスしかないのに分裂気味だったので、一つの芝居を助け合って創るなかで、クラス全体で理解し合ってまとまってほしいとも思っていました。色々なことを体験してもらえて、素晴らしい発表会となりました。生徒たちのアンケートでも、とても手応えがあったことが伝わりました。
2021年度姫路女学院中学1年生 アセスメントリポート
プログラムスタート時にBeforeアセスメントも行っています。それはGLODEAのアセスメント30項目に関する現状の自信・満足度を測ったものです。
全ての授業が終わり、同項目によるAfterアセスメントを行いました。Afterでは、1年後の自信・満足度に加えて、演劇教育の授業を受けて役に立ったと感じたかどうかを訊ねました。
赤字が今回の集計結果です
【アセスメントシート】
現状の自己評価を1(自信がない)2(あまり自信がない)3(普通)4(まぁまぁ自信がある)5(自信がある)のいずれかに〇をつけ、演劇の授業で学んだことが生活(学校、家庭など)においてどの程度役だったか、下段の3つから一つを選んで〇で囲んでください。
人と関わる力 | |
多角的思考力 | 考えるとき、一つの物事を、色々な見方でとらえることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.1 変わらなかった4 ・ 少し役に立った18 ・大いに役に立った1 |
問題解決能力
|
問題を発見し、解決に向けて考えたり行動を起こしたりすることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.3 変わらなかった6 ・ 少し役に立った5 ・大いに役に立った12 |
共感 | 相手の立場に立って、気持ちを理解することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.7 変わらなかった4 ・ 少し役に立った9 ・大いに役に立った10 |
傾聴力
|
他の人の話をよく聴き、言いたいことを理解することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.7 変わらなかった4 ・ 少し役に立った11 ・大いに役に立った8 |
協調性
|
みんなと協力し、団結して活動ができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.8 変わらなかった3 ・ 少し役に立った6 ・大いに役に立った14 |
自発性 | 自分から行動したり、意見を言ったりすることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.1 変わらなかった8 ・ 少し役に立った13 ・大いに役に立った2 |
社交性
|
どんな人とも話をすることができ、打ち解けることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.3 変わらなかった3 ・ 少し役に立った15 ・大いに役に立った5 |
関係構築力 | 目標に向けて、他の人と協力することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.5 変わらなかった4 ・ 少し役に立った8 ・大いに役に立った11 |
リーダーシップ
|
積極的にリーダーになり、みんなをまとめることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均2.1 変わらなかった17 ・ 少し役に立った4 ・大いに役に立った2 |
臨機応変力
|
予想外のことが起こっても、柔軟に対応することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.0 変わらなかった9 ・ 少し役に立った13 ・大いに役に立った1 |
人に伝える力 | |
対話力
|
1対1で話している相手に、自分の思っていることを伝えることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.4 変わらなかった7 ・ 少し役に立った9 ・大いに役に立った7 |
会話力
|
集団で話しているときに、バランスよく発言したり聞いたりすることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均2.7 変わらなかった14 ・ 少し役に立った8 ・大いに役に立った1 |
説明力 | 人にわかりやすく説明することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均2.5 変わらなかった12 ・ 少し役に立った11 ・大いに役に立った0 |
声
|
みんなが聞きやすく、はっきりと聞こえる声を出すことができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.4 変わらなかった5 ・ 少し役に立った12 ・大いに役に立った6 |
想像力
|
想像することが得意で、独自のアイディアを思いつくことができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.1 変わらなかった8 ・ 少し役に立った12 ・大いに役に立った2 |
柔軟性 | 柔軟に物事を考え、うまくいかなくても他の方法を考えることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.1 変わらなかった12 ・ 少し役に立った9 ・大いに役に立った2 |
身体表現
|
身振り手振りなど身体を使って、自己表現することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.3 変わらなかった7 ・ 少し役に立った9 ・大いに役に立った7 |
表情 | 表情を豊かに出すことができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均2.8 変わらなかった11 ・ 少し役に立った9 ・大いに役に立った3 |
感情
|
感情が豊かで、気持ちを表情や動作などに出すことができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.0 変わらなかった11 ・ 少し役に立った9 ・大いに役に立った3 |
エネルギー
|
熱意をこめて、人に自分のやりたいことや思いを伝えることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.3 変わらなかった8 ・ 少し役に立った11 ・大いに役に立った4 |
心と個性 | |
挑戦精神
|
難しいと思えることや、初めてのことでも挑戦することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.2 変わらなかった8 ・ 少し役に立った11 ・大いに役に立った4 |
集中力
|
やると決めたことは、集中して取り組むことができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.4 変わらなかった7 ・ 少し役に立った9 ・大いに役に立った7 |
誠実 | ウソをついたり、自分をだましたりすることなく、正直でいることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.1 変わらなかった9 ・ 少し役に立った12 ・大いに役に立った2 |
自制心
|
思い通りにならないことがあっても、落ち着いていることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.0 変わらなかった9 ・ 少し役に立った11 ・大いに役に立った3 |
意志
|
やると決めたことは最後までやりとげることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.2 変わらなかった7 ・ 少し役に立った8 ・大いに役に立った8 |
忍耐力 | 粘り強く取り組み、トライし続けることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.2 変わらなかった8 ・ 少し役に立った8 ・大いに役に立った7 |
好奇心
|
いろいろなことに興味を持って、探求することができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.2 変わらなかった10 ・ 少し役に立った6 ・大いに役に立った7 |
感受性 | オープンな気持ちで、自然や人を感じることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.1 変わらなかった9 ・ 少し役に立った13 ・大いに役に立った1 |
ポジティブ思考
|
何が起きても、前向きに気持ちを切りかえることができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均3.0 変わらなかった12 ・ 少し役に立った4 ・大いに役に立った7 |
自信
|
自分に自信をもって物事に取り組むことができる。
1――――2――――3――――4――――5 平均2.9 変わらなかった10 ・ 少し役に立った6 ・大いに役に立った7 |
このような結果となりました。月1回程度ですし、すべてのスキルをまんべんなくというわけにはいきませんが、全ての項目に対して、ある程度役に立ったという実証ができました。スピーチ・プレゼン・リーダーシップ系は「変わらなかった」という反応が多くても大丈夫です。2年次移行にやっていく項目ですので。協調しながら物事に集中して取り組んでいくという項目が、発表会後の調査ということもあり、高めですね。
これらの30項目は総合的な人間力です。大人であっても自信がない項目も多いのではないでしょうか。GLODEAでは演劇教育を通して、総合的な人間力を上げていくことを考えており、今回の結果でも非常に効果的であることがわかりました。
一年間の指導を終えて
クラスの3分の2が内向的で引っ込み思案という生徒たち。しかも新設中学校の1年生のため、先輩がおらず、教えてくれる人も見習う人もいません。演劇経験も2~3名を除ければ、みんな初めてということで、かなりかなりファシリテーションに苦労しました。
発表会のあとの振り返りシートを読むと、「身体を向けることを意識できた」「練習より声を出せた」など、かなりの成功体験を得られたことがわかりました。取り組んでいることからするっと、もっともっとたくさんのことを引き出そうとしているのですが、彼女たちにとっては、舞台に立って台詞をいうとか、大きめの声を出すとか、台詞をしっかり覚える、というレベルでもかなりのハードルなんですね。それを考えると、よく、即興でのお芝居とかやってこれたなと思いますし、演劇が嫌になって来なくなるということもなくて、すごいなと思います。
場所は姫路ですから距離がありますし、一ヶ月に1回しか顔を合わせないわけで、継続的に密にコミュニケーションが取れるわけではありません。演劇教育の考え方は、既存の教育とは相反する部分が多く、せっかく創造的で個性重視の指導をしても、学校での生活のほとんどが一方通行的で正解不正解に囚われたものですと、浮いてしまうだけです。必要性と重要性を学校サイドにも知ってもらうことに苦労しました。
幸い、姫路女学院には、うちの講座も受講している先生と事務局長がいて、2人が全面的に支援しながら進めてくれましたので、そういう意味ではやりやすいといえました。一年間やりきって、他の先生方にも、演劇教育というものがどういうものなのかわかってきたのではないかと思います。
今年度からは新1年生と2年生になり、月2回姫路に行くことになります。スケジュール的にも大変ですが、頑張っていこうと思います。
また、このような演劇教育プログラムを取り入れたいという学校さんがいらっしゃいましたら、是非一度お話しましょう。