アンディ・ユーテックを招いて行った第三回グロディアサロン「興味を引き出して、体を使って言語習得。第二カ国語学習のための演劇の使い方」が終わりました。
今回の講座は、私自身英語の講師でもあるので、大変興味深い内容でした。
本来コミュニケーションや自己表現のツールである言語が、詰め込み式学習とテスト至上主義的な環境のために、つまらないもので、苦痛なものになってしまっている現状。そのなか、何か解決策を求めてくる現役の先生を含めて、多くの参加者でにぎわいました。
今回の講座では、演劇的手法を用いたテクニックや、英語を教えるうえでの心構えを教えてくれました。
「ちょっとした変化を加える」テクニックを学ぶ
今回は中学校1年生レベルの文法のダイアローグのテキストを使いました。ダイアローグをただ読ませて終わるだけではなく、声のトーンを変えてみたり、アクセントを変えてみたり、状況設定を変えたりして行いました。
例えば、「巨人みたいに大きな声で読んでみて。」とか、「テスト中だと思って、ひそひそしながら読んでみて。」とか、「代名詞を強調して読んで。」とかです。
参加者はもちろん大人の方ばかりでしたが、みんな笑いながら楽しそうに行っていました。ちょっとした変化を加えることで、学習者の想像力がかきたてられることがわかりました。
ステップ バイ ステップで教えていく
カリキュラムに沿って行っていると、どうしても教える量が過剰になってしまい、学習者の集中力が切れ、思考停止し、やる気をなってしまいます。
アンディは必ず「Step by step(少しずう)」教えること注意するように言っていました。
文法の内容も教えるのですが、全部いっぺんに教えるのではなく一部分だけ。教えたらダイアローグに戻って楽しいワークをする。そして次のターゲットになっている文法や単語を説明する。アンディは少しずつ教えることを心掛けるようにと言っていました。
通常の対面型の学習ではインプットのみなので、呼吸のようなインプットとアウトプットのある授業がうまいと思いました。
2時間という短い講座で、気づけば文法の一般動詞から進行形、そして助動詞willまで行っていました。当然基礎文法を理解している参加者ですが、このやり方であったら、生徒もストレスなく学ぶことができると思いました。
先生は身を引いて、生徒を観察する
特に重要なことは、先生が何でもやってしまわず、生徒がやっていく過程を観察することです。十分に生徒の動向を見て、必要に応じて助けを出したり、相手の意見を引き出すような質問を投げかけたり、適切な提案をしたりします。
まだ臨機応変に英語を使えない先生がいると思いますが、その場合にはネイティブのアシスタントティーチャーの助けを借りて行えばいいのかと思います。
また、生徒同士のやり取りや意見交流を大切にすることも重要であるといっていました。それは「先生の言ったことは50%しか覚えていないが、生徒が言ったことの80%は覚えている。」と言われているからだそうです。
2022年には英語の教科では5技能が求められるそうです。LISTENING, READING, WRITING、SPEAKINGの4技能から、SPEAKINGが「やり取り」と「発表する」にわかれ5技能になります。より国際化に適した人材を作ることにフォーカスされているのでしょう。
けれど、そもそもテストで測れないコミュニケーションの部分をどうやって教えていくのでしょうか。そもそも和合を重んじる国民性の中、英語のクラスだけ第二か国語だけを使って、ディベートやスピーチをやらせるのはできるのか。いろんな状況をダイアローグにして、教材化にしてコミュニケーション学習といっても生徒はもちろん退屈するだけでは。
コミュニケーションや想像力を扱う演劇というのは日本の英語教育の改革の重要なカギとなりえると思います。人の感情や楽しさや創造性を尊重する演劇には、日本の教育の欠けている部分を補うものがあるのではないのでしょうか。