演劇教育家インタビュー第6回 ドイツで演劇教育を学ぶ劇団EnGawa主宰佐藤音音さん

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佐藤音音

「未来のために前進する演劇教育家インタビュー」第6回は、ドイツのミュンヘン大学を卒業し、ニュールンベルク大学で演劇教育を学ぶ、日本人の佐藤音音(おとね)さんに、ドイツの演劇教育の事情をうかがいました。


 

ドイツの演劇はどういう感じなんですか?

ドイツの演劇は古典が多くて、ゲーテやシラーなど名のある作家の国なので、学校でも習わないといけなく、一般の人にとっては難しい演劇が多いです。

ゲーテやシラーは教科書のなかに出てきますし。カリキュラムとして読まなくてはいけないですし、劇場に行ってお芝居を観て、それについてアフタートークやワークショップがあったりします。

ドイツ人はかなり演劇に対して親しみがあるんですか?

ある人とない人とで、かなり分かれています。学校から学ばなければいけなかった人は演劇を観ることも多いんですが、親しみがない人は全く行かないし。ですから、劇場はお年寄りの方や学校を出た方が多くて、ゲーテやシラーらの影響もあり、難しいとか高尚であるとか、わかりにくいという偏見があります。

最近は特に演出もモダンで難しいもの、観てすぐにわからないものも多くて、「これは何だ?」というものも多くて、アフタートークが必要な感じになっていますね。

ドイツの演劇教育について聞く演劇教育で考えると、ドイツの演劇教育はどういう風に行われているのですか?

演劇教育はドイツでもわからない人が多いのですが、でも必ず国立劇場とか大きな劇場には演劇教育者がいて、一般の人や学生の方に演劇に親しんでもらうために、学校とも連携して、こういうお芝居がやっていますよと紹介したり、クラスを劇場に招いたり、演劇教育者が学校に行って、お芝居のことを話したりワークショップをやったりします。

劇場と学校がうまく連携しているんですね

そうですね。学校の先生も演劇教育というものがどういうものか学びますし、演劇教育者も学校や子どものことを学ぶことができます。

それは動いて学ぶことが多いのですか? 戯曲を読んで読解するというのが多いのですか?
学校では、まずドイツ語の授業としてまず作品を読んで、演劇教育と関わりがあるときに、演劇教育者にもよるんですが、動いて、お芝居のテーマに応じて、実際にやってみたりします。

それは動いて学ぶことが多いのですか? 戯曲を読んで読解するというのが多いのですか?
学校では、まずドイツ語の授業としてまず作品を読んで、演劇教育と関わりがあるときに、演劇教育者にもよるんですが、動いて、お芝居のテーマに応じて、実際にやってみたりします。

ニュルンベルク大学 佐藤音音ゲーテやシラーという巨匠がいるだけに、文学性やテキストを重視しているんですね

まずテキストから学ぶというか、読む・観るから学ぶというのが、演劇教育のスタイルというか社会の教育として強いです。ドイツは昔からそういう感じですが、演劇を観て、社会を学ぶ。昔は演劇は娯楽というイメージもあったんですが、シラーから庶民向けの戯曲が書かれていて、庶民のモラルについてだとか政治についてだとか、そのほうが庶民も観て共感できるので、より多くの人が観るようになりました。

そして20~30年代からブレヒトが、演劇はやるものだと感じになって、学ぶためには自分で演じなければならないという見方も現れてきました。感情から入る方が学べますよね。

ドイツでは学校の中で演劇を学んだりするんですか? 科目のように学んだりしますか?

科目のように学ぶのは少ないと思いますが、卒業試験として演劇を取ることができますし、それなりにちょっとずつ演劇が一つの芸術して科目として認められる方向に向かっていると思います。

佐藤音音 otone sato私の学校はシュタイナー学校だったので、演劇はすごく大事なものとしてみられていて、6歳の頃から舞台に立ちますし、みんなと一緒にまず舞台に立って発表するということをします。私の学校では学年によってどの作品を上演するかが決まっていて、学校の中に当たり前のように演劇がありました。

上のクラスになると、自分たちで作品を選んで、先生と相談しながら演出したりします。衣裳は学校にありました。作ったりもあったんですが、基本的に私たちは演じる側でした。作品を選んで、役の取り合いがあったりして、みんなでチームワークで作品をつくっていました。

大学で演劇教育を学んでいるところですが、これからどんな風に活用させていきたいと考えていますか?

ドイツの演劇を見てきて、演劇は難しいという偏見があるのを強く感じているので、演劇は誰もが自分でも演じることができるということ、演劇は遊ぶことなのでもっと親しみを持てるものだということを伝えていきたいと思っています。それはこどもたちに限らず、演劇に無関係の人たちもそうです。

私の場合は日独というものがあるので、日本でもやってみたいし、ドイツに住んでいる日本人の方にも伝えたいと思いますし、いろいろな場所でやっていきたいと思います。

ドイツ演劇教育 佐藤音音


佐藤音音

家族と共に幼少より、ドイツに在住し、ミュンヘン大学で演劇学、日本学、民俗学の修士を終える。
2012年、日独劇団EnGawaを旗揚げし、演出家として、年に数回のペースで作品を上演。
昨年から、エルランゲン・ニュールンベルグ大学で演劇教育(theater education)の修士課程で学んでいる。

EnGawa

2012年初頭に演出家の佐藤音音、ドラマツルギー(戯曲に特化した演出と助言)のエヴァ・マリア・ライヒャルト、俳優の小倉雅子のメンバーで旗揚げされた劇団EnGawaは、 2012年3月に東日本大震災のチャリティー公演『神砕 Shinsai – Shattering Gods』を活動の幕開けとして、現在様々なプロジェクトを企画して演劇祭などへの参加を目指し活動している。

Hot Particleホット・パーティクル

2018年3月17・18日、演劇スペース「サブテレニアン」で上演された「ホット・パーティクル」は、かつてドイツで上演した作品を今回日本でも上演。佐藤さんは、翻訳・演出として関わっている。

Hot Particle Engawa