vol.8 複数の技能をドッキングして伸ばす演劇教育

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複数の技能をドッキングして伸ばす演劇教育

教育というのは、柔軟で創造的で可能性があるものです。
教科書や学習指導要領などがあると、それらに囚われて、自由さが失われてしまうものです。そして、ただ暗記させるとか、テストでいい点数をとるという方向に行ってしまいます。もっと人間的な技能に目を向けなければいけません。

例えば、読む・書く・討論する・作る・表現するなどの人間的な技能を伸ばすにはどうすればよいでしょうか? こうしたことが演劇教育の可能性のなかで実現することができます。今回は、ぼくが考案した、複数の技能をドッキングして伸ばす演劇教育をご紹介します。2019年には実際に子どもたち相手に実施していきたいなと思っています。

 

名作ファンタジー小説を演じてみよう!ファンタジー×演劇講座

この講座は、ファンタジー小説を読み込んで、それを演劇として表現するというものです。空想のなかで繰り広げられる幻想世界ですが、それらの登場人物になったつもりで、想像力をいっぱいに使って表現します。
はてしないも物語ファンタジーには、現実世界に応用できるメタファーやメッセージがたくさん散りばめられています。それだけで教育としてとても良いのですが、独りよがりな想像世界にならないように、よく読解したり、みんなとイメージを共有したりします。
そして、ファンタジーの主人公になりたいという変身願望を刺激しながら、実際に登場人物になったつもりで即興で演じ、衣裳などをつくって稽古を積んで、演劇として発表まで行います。
まさに壮大な演劇教育です。

伸ばす技能

読む 想像する 討論する 計画する 作る 表現する

カリキュラム例

Day1 抜粋を紹介し、声に出して読んでみる。また、内容について討論する。
Day2 宿題として本編を読んでくる。感想をシェアする。
Day3 気に入ったシーンを即興で演じてみる。どんな役でも選り好みせずにチャレンジする。
Day4 発表会のプランを立てる。
Day5~6 衣裳と小道具を製作する。
Day7~9 稽古をする。
Day10 発表する。
全10回 期間3ヶ月

 

書いて演じる! シナリオ×ドラマ講座

この講座は、自分でシナリオをつくって、みんなで演じて撮影するという講座です。自分で創作できる力を身につけなければ、単純作業の仕事や暗記がものをいう仕事など選択肢が将来狭まってしまいます。
この講座では、読み書きのスキルを伸ばしながら、言葉で表現する楽しさや、新しいものを創造する楽しさを知ってもらいます。文章を書く力もつきますし、実際に演じて発表するためには、他者とコミュニケーションを取り、他者の気持ちを理解する必要性も出てきます。頭の中にあるアイディアを形にする難しさにも挑戦することになります。また、最終的に映像の形で残すので、記念に残る講座となっています。

シナリオ講座

伸ばす技能

読む 書く 想像する 計画する 表現する

カリキュラム例

Day1 シナリオの書き方を学ぶ。
Day2 興味のあること考えてきて発表。どんなシナリオにするかアイディアを出す。
Day3 ストーリーボード(絵コンテ)にしてみる。絵が苦手な人は文章でもOK。
Day4~5 シナリオを書く。
Day6 シーンを演じてみる。
Day7 シナリオを手直しする。
Day8 リハーサルをする。
Day9~10 撮影する。
全10回 期間3ヶ月

 

アウトプットの重要性と演劇教育の可能性

学校や塾でやっていること以上のこと、学校や塾でやらないことを提供しなければいけないと思います。子どもたちは、どれだけ想像力を使っているでしょうか? どれだけ想像力のなかに没頭しているでしょうか? 新しいものを創造する力、形にする力、自分の声や感情や身体で表現する力を鍛えているといえるでしょうか?

子どもたちがもっている純粋で自由で柔軟な心も、小学校が上がっていくにつれてドンドンと人と比較し、目に見えるテストの点数に左右され、親の期待や社会常識によって歪められていきます

一方で親御さんは、自由な子に育ってほしい、のびのびと感情や想像力豊かな子に育ってほしいなんて思っていますが、そのために必要なことは、ちょっと遊びに連れて行ったり自然体験をさせたり、本を買ってあげるくらいではないでしょうか?

子どもたちの創造性を伸ばすぼくは今、学研さんから本の出版の依頼を受けていて、こども向けの本を調べていますが、知識を増やすものばかり溢れています。伝記シリーズや社会の仕組みを教えてくれるものなど、そういうものがあってもいいのですが、あまりにもインプットに偏っていると思います。
だから、アウトプットしていく必要があるのです。結局、人はアウトプットしながら生きていくのですから。アウトプットのためには、創造性と表現力が可能性を広げます。演劇教育は実にフィットしているのです。

今回ご紹介したのは、ファンタジー小説とドッキングしたものと、シナリオ創作とドッキングしたものの二つですが、どちらも自分で考え、想像し、形にし、コミュニケーションを取りながら表現していくという人間の基本的な技能を中心に据えています。
見たことも聞いたこともない講座だけど、なるほどなと思える講座ではないでしょうか? GLODEAとしても実用化させていきたいと思います。