演劇教育はコミュニケーションとプレゼンテーション、創造性や生きる力に寄与する魅力的なツールですが、一般の人たちの選択肢にすら入っていないのが現状です。
というのも、演劇教育を受けられる場も広がっていないし、講師も少ないので、もっともといえばもっともですが。
ベネッセ教育総合研究所さんが16000名の調査から出したデータを基に、考えてみたいと思います。
子どもたちの習い事の現状
小学生が塾や習い事に行っている割合は、小学校低学年で45%、高学年で55%くらいが全国平均のようです。ちなみに私たちの事務所がある文京区では、小学校低学年で70%、高学年で85%くらいですから、いかに熱心かがわかります。
収入と教育格差という問題も背景にありますが、いずれにしても、なかなか忙しい子ども時代を過ごしています。それらが、どれだけ子どもたちの成長に有益で、将来のためになっているのか、そこには疑問があるでしょう。というのも、ほとんどの習い事は、昔ながらのものだからです。
演劇はどのぐらい選ばれているのか?
習い事は、スポーツであれば、スイミングが1番(小学生で33.6%)で断トツ、サッカーが8.7%、野球が4.3%(いずれも小学生)です。
芸術活動では、音楽が20.7%で断トツ1位、他はほとんどどんぐりの背比べで、絵画2.8%、バレエ2.0%となっており、演劇・ミュージカルは0.4%(いずれも小学生)です。
少ないですね。小学生の1000人に4人しかやっていないわけです。
昔ながらの慣習で課されている習い事
勉強のために半数の小学生が塾に通い、他の習い事に対しても、スイミングや音楽など古典的なものをやっていて、どれぐらいの意図や方針があって選択しているのか疑問です。
これだけ世の中がめまぐるしく変わっていて、将来こどもたちが就いている職業も、今はない新しい職業ばかりだといわれています。それなのに、将来を見越して選択できているといえるのでしょうか。
この調査の時点ではプログラミング教育が普及していないので、入ってはいませんが、そのように新しい教育がもっと取って代わるようになっていかないといけないでしょう。
創造性を育む教育を
知識重視の詰め込み学習ではなく、もっと自分で考え、自分で探求し、自分で発見する学習を取り入れていくべきでしょうね。また、芸術やスポーツに関しても、凝り固まった偏見で選ぶのではなく、幅広い視野で選んでほしいですし、子どもたちもまずはいろいろなものを体験してみるといいでしょうね。
これからの時代必要なのは、知識よりも創造性や人間力です。また、昔からいわれているコミュニケーション力も大事ですが、学習塾や音楽やスイミングは、そこには特化していません。未来に役立つスキルを磨いていくために、演劇教育の良さをもっと広めていきたいですね。
演劇を教育として取り入れる割合を10~50倍に
演劇/ミュージカルを定期的にやっているという人は、幼児で0.2%、小学生で0.4%、中学生で0.6%、高校生で1.5%という数字が出ています。異常に少ないですね。
イギリスなどでは公教育の中に取り入れられているぐらいですが、日本では学校でも学芸会や文化祭ぐらいしか触れず、学校外でも1000人中数名といった状況ですから、なかなか良さがわかってもらえず、習い事選びの選択肢のなかに入れないですね。
伸びしろはすごくあるので、最低10倍、目標50倍くらいにもっていきたいと思います。つまり、幼児で、10人に1人、小学生で10人に2人、中学生で10人に3人、高校生で半数以上。とはいえ、別にずっと学び続ける必要はないし、人生のどこかで1~2年程度でもいいと思います。学校の科目に入れば本当は理想的ですけどね。とにかく、少しずつ私たちとしても啓蒙活動を行っていかなければと思います。