共同演劇 / Simultaneous Dramaturgy

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今まで紹介した新聞劇場やフォーラムシアターと同じく、日常の問題解決を促すアウグスト・ボアールの考案した手法です。

しかし、フォーラムシアターと新聞劇場は、プロセスが多かったり、観客への要求度が高かったりと難しいので、もう少しハードルの低い手法を紹介しようと思います。

 

共同演劇 / Simultaneous Dramaturgy

※「共同演劇」はとりあえずの私の訳です。ちなにみにSimultaneousは「同時に」、Dramaturgyは「演劇法」という意味です。

 

まず、観客となる人の地域や学校で起こりうる身近な問題を扱った作品を製作します。例えば、学校で上演するなら「いじめの問題」、地域を対象にするなら「高齢化問題」を扱った、観客全員が共感する作品をつくります。

上演時に、演者は、作品の中で問題解決が必要となるシーンまで演じて、そして一旦演技を止めます。演者は、観客にそのシーンの解決策を求めます。

観客の一人から解決策の提案があれば、演者は提案の通りに演技します。演者はその提案者の意図通りに演技をするために、どんな言葉を言えばいいのか、どのよう振舞えばいいのか、提案者に質問をして演出を仰いでもいいかもしれません。

そして、演者がその解決策を演技を通してみせた後に、その解決策がどうだったのか、観客から意見をもらいます。もしくは、新たな解決案を提案してもらいます。

この演劇的な手法によって、観客に共通した問題意識が生まれ、ただ会議室や教室で話し合うより、より具体的な解決案や意見が出てくるようになります。

アウグスト・ボアールの「被抑圧者の演劇」の中で、この共同演劇を用いた実例が一つ挙げられています。

ペルーの貧困層のある夫婦の話です。夫は妻に重要だという書類を預けます。読み書きができない妻は、書類の中身がなんであるのかわかりません。そこで妻は友人に頼んで、重要だといわれていた書類を読んでもらいます。実はそれは浮気相手へのラブレターであったことが分かるのです。そしてその夜、夫は、事実が発覚したことを知らずに家に帰ってきます。家には妻が復讐をしようと待っているのです。

ここで芝居が中断され、演者から質問が投げかけられます。「どのようにして妻は復讐を成し遂げるべきなのか?」

なかなか日本では考えられない状況であり、質問です。しかし、この作品が、読み書きができない人が集まる貧困層の女性に向け行われていたと思えばある程度納得します。

ちなみに妻の行動に対して、こんな解決法が観客から提案されました、

 ①夫が悪かったと思うまで、泣き叫ぶ。

 ②家を出ていく。

 ③家に鍵をかけて、夫が入ってこれないようにする。

 ④一旦夫を家にいれ、そして、おもむろにでかい棒を持ち、夫を思いっきり殴る。夫が心底後悔するまで殴りつけたら、棒を捨てる。そして何事もなかったかのように家事を始める。

①②③の選択肢は愛人のいる夫にとって、痛くもかゆくもありません。なので心身ともに痛めつけられる④の解決案は観客の大多数から支持を受けました。

おそらくこの極端な解決策が支持された理由には、こんな旦那を持つ人が多かったことや、読み書きができず劣等感を感じている人が多かったことなどが理由に挙げられるかもしれません。

念のために言っておきますが、共同演劇は、舞台上での解決策を現実的に実行を起こすことが主眼ではありません。現実でも変化を起こすことができる意志や考えを呼び起こすことが、このワークのポイントと言えるでしょう。

 

 

 

【参考文献】

・August Boal Theatre of the Oppressed 1979

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