フォーラムシアター/討論演劇 (Forum Theatre)

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この前のブログではアウグスト・ボアール(Augusto Boal)本人を紹介したので、今回は彼の用いた手法に触れていきたい。

 

 フォーラムシアター(Forum Theatre)

日本では「討論演劇」と訳されている。

 

行われる手順としては、まず参加者は、社会的または、政治的な問題の話しをしてもらう。そしてその問題を描いたスキット(短い劇)をつくり、一度みんなで観劇し、問題点について話し合う。二度目見るときは、参加者は劇の最中に自由に劇を止めることができ、劇を止めた参加者は舞台上で演技をしている役者に成り代わって、演技を通して考えた解決策を披露する。そして、参加者でその提案された解決方法について話し合う。

 

フォーラムシアターには、あらかじめ用意された答えがなく、その時居合わせた参加者でベストな解決策を決めることとなる。もしかしたら、解決策が現実離れしているものかもしれないし、全くファシリテーターの意図していた結果とは違うかもしれない。

参加者は演技を通して、現実ではあきらめていた問題に取り組み、解決すること経験することができる。また参加者はこの作業をとおして、同じ問題を共有し、ともに意見を出して考え、取り組むことができるのだ。

 

ボアールがフォーラムシアターを使った、一例が挙げられている。

「漁港で、漁師が、オーナーから過酷な労働環境・状況を強いられ、搾取されている。」という問題をスキットにし、参加者(その漁港の関係者)から演技を通して様々な解決策が提案されている。

その提案された解決案は、オーナーに爆弾を投げた演技をした人がいたり、ストライキを敢行するものがいたり、労働組合を結成するものがいたりしている。その中でベストな案を参加者が選択する。

 

フォーラムシアターのやり方は、ボアールの著作「被抑圧者の演劇/Theatre Of The Oppressed」から直接紹介したので、ボアールの生きたブラジルの国民性や情勢に大きく影響されている。

今の日本でそのままの形で使おうと思っても、討論が苦手な日本人にとっては、フォーラムシアター難しいかもしれない。

しかしターゲットとなる参加者に合わせて、手順やアプローチを変えて使うことは大いに可能である。

 

今、私たちは、中高校生向けにフォーラムシアターを考案中である。確かに生徒にとって、意見を発表するだけでも憚れるのに、人前で演技をするとなるとかなり高いハードルかもしれない。

しかし、そこをクリアすることができれば、いじめ問題、思春期の抱える悩みなど、生徒同士で考え、取り組むことのできる大変有効な手段になりえるのではないだろうか。

 

【参考文献】

・August Boal Theatre of the Oppressed 1979

 

【写真出典】

・ウィキペディアより

https://en.wikipedia.org/wiki/Augusto_Boal#/media/File:Augusto_Boal.jpg