ニューヨークの演劇教育 Child’s Playの視察

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代表の別役です。2018年3月にニューヨークに行ってきました。これはプロの演技講師としてアメリカで教えるという日本人としては異例の挑戦でだったのですが(大成功でした!)、その際ニューヨークでChild’s Play NYという演劇教育のスクールさんを視察してきました。

 

ニューヨークの演劇教育とは

このスクールさんをご紹介したいと思います。
なお、映像はダメでしたが、校長のJocelyn Greene(ジョセリン・グリーン)さんにインタビューもさせてもらいましたので、演劇教育家インタビューにて取り上げる予定です。

 

多岐にわたる年齢層に届く、豊富なカリキュラム

アメリカ、ニューヨークの演劇教育

まず、この演劇教育スクールの特徴は多岐にわたる年齢層に合わせた豊富なカリキュラムだといえます。2~3歳の「Imagine That」、4~6歳の「Mini Musicals」6~11歳の「Players Series」、8~12歳の「Shakespeare Players」、12~16歳の「Teen Company」と年齢別に分けられています。また、サマーキャンプの実施や、学校での活動などがあります。講師は現在約40名ほどいます。

体を使った動作、音楽、想像力、色

ニューヨークのブルックリンを主な本拠地としているようで、ブルックリンのダンボでジョセリン・グリーン校長のインタビューをさせてもらった後、少し移動して教会で行われているクラスを見学させてもらいました。
教会で演劇のワークショップ

12名のこどもたちに対して、先生は4名。1名がメインティーチャーで、2名がサブティーチャー、1名がピアノの伴奏係でした。これだけの少人数のクラスでも、4名も関わっているというのがまずすごいなと思いました。親御さんの払う受講費だけではまかなえないでしょうね。おそらく補助金が出ているのでしょう。こどもたちの年齢は下のYouTubeくらいの年でした。

特徴的なのは、言葉を発する能力、身体で表現する能力、想像する能力をうまく伸ばしているプログラムだということ。
最初の30分はシアターゲームで、そのあと台本をつかったレッスンになりました。ジョセリンの進行に合わせてピアノの音が即興的に入り、子どもたちを飽きさせず、没入させる一助になっていました。他にもギターを使ったりするようです。即興音楽は、たとえばジャンプをするときにジャーンと鳴らしたり、音楽というより効果音という使い方でした。
60分しか見学出来なかったのですが、どうやら休憩なしで、小学生たちに90分教えているようです。先生が一人だとこれはできないでしょうね。かならずシニアティーチャーとアシスタントティーチャーの2人が入るそうです。

真似る、音の刺激、間を置かずスピーディーに

シアターゲームは定番のものもいくつか見られました。ジョセリンのファシリテートはさすがで、間を置かずにどんどん喋り、説明とサイドコーチ(ワーク中に声をかけること)を繰り返します。表情もすごく豊かで、全身を使って子どもたちを導いていました。教師が実践して真似させるということは重要ですね。
こどもたちは、身体を動かしたり、なにかを真似たり、どこかの場所にいることをイメージしてふるまい、楽しく想像力を膨らませていました。

このYouTube動画のように、ある程度小さい子どもであってもゲーム型は使えます。動物を真似てみたり、単語やフレーズのシャワーを浴びていたら、身体能力・言語能力の向上にもいいでしょうね。
Child’s Playの講師は、みんな俳優ですが、俳優ならではの表現力の豊かさが子どもたちを巻き込むファシリテーションになっていることはいうまでもありません。ここが日本との違いでもあります(日本では演劇の素人が演劇教育をしていることが多い)。

創造的にアイディアを演出し、覚えて実践する

後半の台本をつかった練習(専用のワークブックが存在するようです)では、台本に書かれたシーンを実際にその場で演出しながら、覚えさせていました。その演出も、複数人で順番に手を動かす振り付けだったり、台詞を喋るときにポーズを取らせたり、言葉を発することと、身体の動きを入れること、誰かと組み合わせることや、手順を覚えて実践することが入っているので、教育としての狙いが込められているなぁと感じました。(そして、出番がないときは、ちゃんと待つということも忍耐力を鍛えていますね)

動画で認知と理解を

演劇教育は日本以上に一般的とはいえ、日本と同じように「演劇は俳優になるためのもの、そういう職業のもの」という考えがあり、教育的効果が高いことや子どもの成長のためのツールであることをアピールしていかなくてはなりません。そういう点で、Child’s Playでは、積極的に動画を作成し、様子を理解してもらうとともに、その中でジョセリンや教師が教育的な狙いやワーク内容を説明しています。

動画の中には、どうやって楽しく掃除をするか?など、子育てにテーマを合わせたものもあって面白いです。ゲーミフィケーションと呼ばれる言葉もビジネスの中にはありますが、シアターゲームはそのオリジンともいえます。

校長のジョセリンさんには、是非一度日本に来てワークショップをしてほしいなと思いました。演劇教育家インタビューで、ジョセリンさんのインタビューを抜粋掲載する予定です。フルバージョンは会員の方にお届けします。