vol.1演劇教育は共感を育てることができるか

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演劇教育は共感を育てることが出来るか

別役慎司の演劇教育コラム。vol.1は、「共感」についてです。社会で求められる共感の重要性に対して、演劇教育ができる可能性を考えてみたいと思います。

共感の3つの形

「EQ」で有名なダニエル・ゴールマンは、最新の著書「フォーカス」のなかで、共感には3つの種類があるといいます。

  1. 認知的共感
  2. 情動的共感
  3. 共感的関心

です。認知的共感は、他者を認知し、他者の視点にたって理解できる能力。情動的共感は、相手と感情的に同調できる能力。共感的関心は、他者を心配し、必要とあらば手をさしのべるという行動化ができるタイプです。

共感スキルを伸ばす医師や看護師

医師や看護師は共感に長けていなければいけません。相手の視点に立ち、理解する認知的共感、患者の痛みや苦しみを感じ取って表情や声に現れる情動的共感。そして、相手のために行動化する共感的関心の3つが求められます。

「モチベーション3.0」「ハイコンセプト」などの著者、ダニエル・ピンクは、アメリカでは共感力を鍛えるために医学部ではコミュニケーション教育を取り入れているといいます。また、俳優が全米各地の医学部をまわって、「共感の技術」と題して、表情やジェスチャー、声の抑揚などを教えているケースもあるといっています。

Acting Internship アクティング・インターン

アメリカの医学界には、私たちが思う以上に演劇が浸透しているようです。こんな案内を見つけました。アメリカの医学サイトで医大生のキャリアパス向け記事としてあったものです。

「もしあなたが3年次で、内科医のキャリアに進もうとしているなら、アクティング・インターンシップを取ろうと計画していることでしょう。アクティング・インターンシップは、とてもエキサイティングで貴重な経験です」と。

どうやら、患者に対するコミュニケーションとケアのためのコースがあるようです。共感の技術があるほうが患者の治りが早いという調査もあり、そのために演劇がロールプレイング型とはいえ役立っているならば嬉しいことです。

どうやって共感を育てるか

ダニエル・ピンクも指摘しているように共感は右脳的なスキルであり、左脳的な理論や知識では共感を育てることはできません。では、どうすればいいかというと、体験です。
わたしたちは人間関係の中で体験を通して、人の気持ちを理解します。また、自然に感情が動くことによって、表情やジェスチャーとしても共感のシグナルを発するのです。

そのための練習台としては、インプロのような即興演技が役に立つでしょう。例えば、医療現場であれば、患者役と医師役(あるいは看護師役)に分かれて、実際に即興としてコミュニケーションを取ってみれば、主観的にも客観的にもフィードバックを得られます。

医師としては、言葉選びが難しかったなぁと自己フィードバックがあったとして、患者役から「表情が固くて、話を打ち明ける気にならなかった」などのフィードバックをもらうかもしれません。インプロを続けていけば、言葉選びも卓越してきます。また、表情が苦手だと気づいたら、シアターゲームなどの開放的なワークを通して、表情も豊かになっていきます。

まとめ

共感のように、論理ではなく、体験を通して育むものは演劇がとても有効だといえます。共感に限らず人間力とよばれるものは体験を通してこそ育むことができます。演劇は疑似体験できる場としては非常に幅が広いです。応用の可能性に満ちていますが、アメリカ医学界のように積極的に取り入れなければ宝の持ち腐れです。そのためには、目に見えないことや数値として現れないことでも「Yes!」という柔軟性が必要であろうと思います。

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